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【イベント報告】「リサイクル型社会をリテールとマーケティングで促進するには?」(3/6 第71回NRLフォーラム)



2025年3月6日、NMPLABとNext Retail Labの合同イベントが開催された。

Next Retail Labとは、「次世代の小売流通」をテーマにした研究会で、製造から小売りまで、さまざまな業種に関する調査研究や、マーケティング視点での提言などを行う任意団体である。


今回は「リサイクル型社会をリテールとマーケティングで促進するには?」をテーマに、参加者全員で持続可能な流通とマーケティングの在り方について議論が行われた。


さらに、本イベントでは株式会社Ripplesが提供する革新的な容器技術を取り上げ、CO2削減や資源削減、障がい者雇用創出など、多面的な視点からサステナブルな未来を考える場となった。

講演には

株式会社Ripplesの荒裕太氏と原田雄司氏、そして、地球もわたしも元気になる合同会社代表の神馬彩夏氏が登壇。実務経験に基づいた講演内容は、多くの刺激と洞察を与えるものであった。


また、講演後にはNext Retail Labの理事をはじめとする参加者によるディスカッションが行われ、リサイクル型社会実現に向けた具体的なアイデアや課題解決のヒントが共有された。


本レポートでは、これらの講演やディスカッションを基に、リテールとマーケティングの新しい可能性について考察する。


■講師: 

荒裕太氏 株式会社Ripples 代表取締役 

原田雄司氏 株式会社Ripples 共同創業者 

神馬彩夏氏 地球もわたしも元気になる合同会社 代表


■ゲスト:

株式会社Dole


■ホスト: 

菊原正信氏 フィルゲート株式会社 代表取締役(Next Retail Lab 理事長) 

藤元健太郎氏 ディー・フォー・ディー・アール株式会社 代表取締役社長(Next Retail Lab 常任理事)

江端浩人氏  江端浩人事務所代表 次世代マーケティングプラットフォーム研究会 主宰

 

 目次)


講演:


第1部:株式会社Ripplesによるリサイクル型社会の促進

1.はじめに:株式会社Ripplesの使命と背景

2.会社概要と創業の経緯

 2.1 創業メンバーと専門性

 2.2 主な事業領域

3.水平リサイクル容器「P&Pリ・リパック」

 3.1 製品の特徴とメリット

 3.2 導入事例と運用方法

4.社会福祉と教育支援の取り組み

 4.1 障がい者雇用の創出

 4.2 こども食堂との連携と効果

5.今後の展望

 5.1 環境分野でのさらなる活用

 5.2 防災・教育・福祉分野での活動拡大

6.まとめ:社会課題解決型ビジネスモデルの可能性


第2部:地球もわたしも元気になる合同会社の取り組み

1.イントロダクション:2050年を見据えたビジョン

2.会社概要とミッション

 2.1 地域コミュニティ強化の重要性

 2.2 ゴミ問題解決の多角的アプローチ

3.主な取り組み:エコルシェを中心に

 3.1 規格外食材の活用とB型事業所の支援

 3.2 クラウドファンディング成功事例

 3.3 子ども服のおさがり交換会

4.今後の課題と展望

 4.1 消費者意識改革の深化

 4.2 地域経済循環モデルの強化

5.まとめ:地域と地球に優しい未来を目指して


第3部:株式会社Doleの取り組み

1.はじめに

2.主な取り組み

 2.1こども食堂・フードバンク・被災地支援

 2.2食育活動

 2.3環境配慮型パッケージの導入

3.「もったいないバナナ」プロジェクト

 3.1背景と目的

 3.2活動内容

 3.3オフィス向けデリバリーサービス

4.「もったいないフルーツアクション」

 4.1目的

 4.2活動方針

5.まとめ


ディスカッション:リサイクル型社会実現に向けたアイデアや課題解決のヒント

・日本の文化と行動変容

・社会的活動とエコシステム


まとめ


リサイクル型社会をリテールとマーケティングで促進するには?(荒裕太氏 株式会社Ripples 代表取締役、原田雄司氏 株式会社Ripples 共同創業者)


はじめに


本講演では、環境問題への挑戦、福祉の促進、防災対策、教育支援を通じて社会に貢献する新しいビジネスモデルが紹介された。株式会社Ripplesのミッションや事業内容について具体的な取り組みが解説され、参加者にとって社会課題解決の実践的なアイデアが得られる内容であった。


株式会社Ripplesの創業と事業展開


会社概要 


株式会社Ripplesは、2023年7月に創業され、東京都渋谷区恵比寿を本社に構えるスタートアップである。

 創業メンバーは、約20年間人事領域に従事してきた荒裕太氏と、10年間樹脂領域に従事してきた原田雄司氏。両者の専門性を活かし、次の3つの事業に注力している。


  1. 水平リサイクル容器を活用した取り組み

  2. 障がい者雇用に関するマッチング事業

  3. こども食堂支援プロジェクト


会社ミッション 「都市資源を活用して、ソーシャルソリューションを提供する」を掲げ、環境、福祉、防災、教育の4つの軸で社会の変革を目指している。


水平リサイクル容器「P&Pリ・リパック」の詳細

水平リサイクル容器の特徴 Ripplesが開発した「P&Pリ・リパック」は、プラスチック容器とフィルムで構成されており、使用後にフィルムを剥がすだけで容器を汚さずリサイクル可能である。これにより以下の効果が期待される:


●     ゴミ重量比97%減少

●     100枚使用あたり約4.2kgのCO2削減

●     水を使用せず洗浄不要





導入事例 


同容器は、全国176の大学、洞爺湖サミット、東京オリンピックなどの国際イベント、大手テーマパーク、そしてこども食堂を中心に導入されている。防災用途としても、災害避難所での炊き出し支援に使用され、環境負荷を大幅に削減する実績を上げている。


運用方法




社会福祉と教育支援の取り組み


障がい者雇用の創出 


剥がせるフィルムの製造工程には、障がい者の手作業が取り入れられており、これにより新たな雇用機会が生まれている。



こども食堂との連携 


水場や人手不足などの課題を抱えるこども食堂において、「P&Pリ・リパック」は革新的なソリューションとなっている。容器を使用することで、ゴミ削減、コスト削減、時間短縮が実現し、ボランティア活動の効率化に寄与している。現在、全国30か所以上のこども食堂で導入されており、防災支援の拠点としての役割も期待されている。




今後の展望


Ripplesは、以下の分野でさらなる事業拡大を目指す:


環境分野: 大手外食チェーンやコンビニへの容器導入交渉。

防災分野: 自治体と連携し、避難所での容器使用を推進。

教育分野: リサイクル勉強会や講演活動。

福祉分野: 障がい者雇用の拡大とコンサルティング。


また、大阪万博での容器導入や、カトラリーのアップサイクル事業にも取り組む予定。




まとめ

株式会社Ripplesは、プラスチックを捨てない時代を実現し、社会課題を解決する革新的なビジネスモデルを構築している。本講演を通じ、環境負荷削減と社会福祉の推進を両立する事業の重要性が再認識された。今後の活動がさらに注目される企業である。


 

 

地球もわたしも元気になる未来を目指して(神馬彩夏氏 地球もわたしも元気になる合同会社 代表)




はじめに


2050年にも人間らしい暮らしを実現するために、地域コミュニティや消費者の意識変革を通じたゴミ問題解決に取り組む神馬彩夏氏の活動が紹介された。地球環境への配慮と地域活性化を両立する取り組みや、エコルシェの具体的な事例が詳細に語られ、参加者にとって持続可能な社会の実現に向けた具体的なヒントを得られる内容であった。


会社概要とミッション




地球もわたしも元気になる合同会社は、神馬彩夏氏が横須賀を拠点に立ち上げた組織で、主にゴミ問題の解決を通じて「2050年にも地球も人も元気でいられる社会」の実現を目指している。特に「エコルシェ(エコなマルシェ)」を中心とした活動を通じて、次のようなゴールを掲げている:


●     ゴミを減らすことで地域コミュニティを強化する

●     経費削減や健康寿命の向上を促進する

●     地域経済の循環モデルを構築する


また、「わたしのきっかけ」を創出することをミッションとし、ゴミ問題を多角的に捉える機会を提供している。


主な取り組み

エコルシェ(=”エコ”な”マルシェ”)を通じて、次のような具体的な行動変容を促している。



実例と成果


●     規格外食材の活用:地元の牧場の牛乳と規格外のバナナを組み合わせたバナナミルクを作り販売。この過程で、B型事業所を活用することで、すべての人が参加できる働き方を提供している。


●     クラウドファンディング:キッチンカー導入のため35日間で240万円を調達し、350名の支援者から協力を得た。


●     子ども服のおさがり交換会:地域の子育て支援センターと連携し、年2回開催。一日291枚の衣服が次の利用者のもとへ旅立った実績がある。

(実際の画像)




今後の課題と展望


神馬氏は、環境問題における消費者意識の改革をさらに深めるため、以下の課題に取り組む必要性を述べた:


●     店側が選択肢を増やす:消費者がよりエコな行動を選べるよう、提供するサービスや商品の幅を広げる。

また、ゴミ問題解決の取り組みを通じて、地域の社会資本増加や健康寿命向上、経済の循環モデルをさらに強化し、「地球もわたしも元気でいられる未来」の実現に向けて活動を続けていく方針を示した。




まとめ


神馬彩夏氏の活動は、環境問題だけでなく地域社会全体に好影響をもたらす革新的な取り組みとして注目される。講演では、地域経済やコミュニティの活性化を通じて、持続可能な未来を築くための具体的なアプローチが共有され、参加者にとって貴重な示唆が得られる内容であった。


株式会社Doleの取り組み




はじめに


株式会社Doleは、フルーツの生産・販売を通じて「フルーツでスマイルを。」というブランドメッセージを掲げ、消費者とのコミュニケーションを図っている。単に商品を提供するだけでなく、地球環境を笑顔にすることを目指し、持続可能な社会の実現に向けた多様な活動を展開している。


主な取り組み


Doleは社会貢献活動の一環として、以下のような取り組みを行っている。


●     こども食堂・フードバンク・被災地支援

○     年間117トン(約1800万円相当)のバナナを提供している。

●     食育活動

○     幼稚園へのキャラバンを通じて、バナナの栄養素や食の大切さを伝える。

●     環境配慮型パッケージの導入

○     プラスチック削減を目指し、紙パッケージの導入。

○     フードロス削減のため、バナナの量り売りを実施(主に都内スーパーで展開)。

 

「もったいないバナナ」プロジェクト




「もったいないバナナ」プロジェクトは、規格外のバナナを有効活用する取り組みで、2021年9月に開始された。


  1. 背景と目的

○     フィリピン産のバナナだけで年間約2万トンが規格外として廃棄されている現状を受け、フードロス削減と資源の有効活用を目指す。

  1. 活動内容

○     バナナジュース専門店やカフェ、加工食品メーカーと提携。

○     参画企業は50社以上、商品展開数(SKU)は60点以上。

○     コンビニ(ファミリーマート、ローソン、セブンイレブン)、コーヒーチェーン(スターバックス、ドトール)でも商品展開。

  1. オフィス向けデリバリーサービス

○     2023年10月に開始し、約半年で60社以上に導入。

○     SDGsへの貢献が社員のモチベーション向上に繋がるとの調査結果も。

 

「もったいないフルーツアクション」

2023年10月に新たに開始された「もったいないフルーツアクション」は、規格外フルーツの有効活用をより広範に進めるプロジェクトである。

  1. 目的

○     取り扱うフルーツの種類を拡大し、国産・輸入を問わず規格外フルーツのアップサイクルを推進。

  1. 活動方針

○     「もったいないバナナ」で構築したプラットフォームを活用し、幅広いフルーツを対象に社会全体でフードロスに取り組む。

 

まとめ

株式会社Doleは「フルーツでスマイルを。」というブランドメッセージを軸に、フードロス削減や環境負荷軽減を目指したさまざまな活動を展開している。特に「もったいないバナナ」プロジェクトは、企業間の垣根を超えた取り組みとして拡大を続け、さらなる社会貢献を目指している。今後も「もったいないフルーツアクション」を通じて、持続可能な社会の実現に向けた活動を推進していく予定である。


【ディスカッション】


リサイクル型社会実現に向けたアイデアや課題解決のヒント





講演に続き、参加者によるディスカッションが行われた。一部を抜粋して紹介する。

 

リサイクルペットボトルの導入について、過去には「一度捨てたものをまた消費者の口につくものに変えるのはいかがなものか」という意見もあり、リサイクルペットを使用することに抵抗があったが、エコをテーマにした新しい製品が登場したことで、リサイクルペットボトルを飲料に使用することへの理解が深まり、現在では一般的に使用されるようになった。一方、瓶のリサイクルについては、リサイクルとしての優位性がある一方で、洗浄や輸送にかかるコストや、瓶の重さによる輸送効率の低下が問題として指摘されている。これにより、瓶のリサイクルは一見効率的に思えるが、全体的な環境への影響を考慮すると、改善すべき点が多いことが示唆されている。そのためリサイクルペットボトルの登場により、オペレーションの問題においてはかなり変わってきていると言える。

 

日本の文化と行動変容


日本人は特に衛生面に厳しく、人間中心の視点が強いとされている。例えば、過剰包装や衛生管理に対する強い意識があり、それがゴミ問題や環境問題に繋がっている。これに対し、海外ではエコ意識が高く、環境に優しい方法で物を購入したり使ったりする文化が広がっているが、日本では異物混入などを懸念し、そうした方法には抵抗感がある。また、プラスチックの使用についても、日本は大量のプラスチックを使用しており、その高機能化により消費期限を延ばすなどの経済的な理由からプラスチックが多用されている。しかし、この結果としてゴミが大量に発生し、環境負荷が増している。これを改善するためには、上位からの指導だけでなく、個人やコミュニティからの行動変容を促す必要があり、社会全体での意識改革が求められている。

さらに、行動変容を促すためのアイディアとして、ゲームフィケーションや報酬制度、リターナブルな容器の導入などが提案されている。例えば、ゴミ拾いやリサイクル活動に対してポイントを与えることで、参加者のモチベーションを高める方法が考えられている。これにより、環境に対する意識を高めるとともに、行動を促進することが可能になると期待されている。


最終的には、プラスチックの税金やリユースのインセンティブを高めることで、環境に優しい行動を促進する社会的な仕組みを作り、持続可能な社会を実現することが目指されている。


社会的活動とエコシステム


子ども食堂の支援活動を通じて社会的変容を促し、地域エコシステムを活性化させる取り組みも行われている。子ども食堂は単なる食事の提供だけではなく、地域コミュニティとの交流、食育、社会的支援を提供する場である。しかし、経済的に困窮している子どもたちが行きにくいという偏見があるため、そのアクセスの障壁を取り除くことが必要である。また子ども食堂が持つ社会的な意味は、貧困層への支援にとどまらず、地域のつながりを生み出すことにもある。地域の親同士が交流する場を提供し、子どもたちの社会性を育むことが求められている。


そして子ども食堂の活動を支援するため、企業や自治体との連携が重要である。特に、食品ロス削減に関する取り組みを通じて、食べ物の寄付や食育イベントの実施など、地域経済にも貢献しつつ社会問題に対処している。また企業の社会的責任(CSR)として、地域貢献やエコシステムにおける役割を果たし、子ども食堂の活動が社会的に認知されるような仕組みを作り上げている。例えば、企業版ふるさと納税の導入など、税制優遇を活用して地域支援を促進している。


しかし子ども家庭庁が子ども食堂に助成金を出す動きがあるものの、その実効性については疑問が残る。子ども食堂の数を増やすことが目的となりがちで、その先にある「子どもたちが幸せになること」を最終目標に据えるべきだという意識の重要性が強調されている。国の支援が単なる数の拡大にとどまらず、質の高い支援へと進化することが求められている。


子ども食堂は地域社会における重要なエコシステムの一部を成している。地域資源(例えば、食材やボランティア)を活用し、地域住民が互いに支え合うネットワークが形成されている。地域の問題解決には、自治体、企業、住民の協力が不可欠である。地域内での情報共有や連携を強化することが、持続可能な支援体制の構築に寄与する。



そして子ども食堂を通じて、食糧廃棄を減らすことが可能になり、食品ロス削減が進む。これにより、環境に対する配慮も行われ、持続可能な社会の実現に向けた一歩を踏み出している。また企業や自治体、メディアとの協働が、社会全体での「持続可能な未来のための変革」を促進するエコシステムを作り出している。

このように、子ども食堂は単なる食事提供の枠を超えて、社会的な変容を促し、地域社会内でのエコシステムを活性化させる重要な役割を担っている。


まとめ


本講演では、複数の企業がそれぞれの視点からサステナビリティに対する取り組みを紹介した。各社は持続可能な社会の実現に向け、環境負荷の低減、資源の有効活用、循環型経済の推進に注力しており、製品設計の見直しや新しい技術の導入を通じて課題解決に取り組んでいることが示された。また、企業間の連携やステークホルダーとの協働が重要であることが強調され、長期的な視野に立ったサステナビリティ戦略の必要性が共有された。


またディスカッションでは、企業がサステナビリティを推進するうえで直面する課題と解決策について活発な意見交換が行われた。特に、環境負荷の低減と経済性の両立、消費者の意識改革、業界全体での協力体制の強化という三つのテーマが中心となった。環境負荷の低減と経済性については、持続可能な原材料の採用や製造プロセスの改善が重要であり、長期的な利益を見据えた投資が必要であることが確認された。消費者の意識改革に関しては、企業からの情報発信を強化し、消費者に選択肢を提供することで行動変容を促すべきだとの意見が出た。業界全体での協力体制については、共通の目標設定や情報共有を通じて持続可能な社会の実現に向けた協働が不可欠であることが強調された。これらの議論を通じて、個々の企業の努力だけでなく、社会全体での意識と行動の変革が求められていることが再確認された。

 

文: 青山学院大学経営学部マーケティング学科 杉木莉沙子、青山学院大学経営学部経営学科 柴田凜

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